ARCADE

「やだぁ、あんなオタクと付き合うワケないじゃない」
「そうだよねぇ、でも、仲良くしてるからさ」
「悪い人じゃないんだけどね。付き合うとか、恋人とかはまた別じゃない」
そう言って、西山麻里は笑い崩れた。ボクが教室のドアの脇に立っているのには気づいていないようだった。ああ、なんてステキな声なんだ。
それを聞いたときは不思議とショックを感じなくて、「やっぱりな」という自虐的な思いを抱えながら笑みさえ浮かべてその場を後にした。でも、帰り道段々悲しくなってきて涙が出てきた。他の誰がボクのことをオタクと蔑んでも良かったけど、あの娘にだけは言って欲しくなかった。そんな種類の言葉を聞いてしまった。即死呪文みたいだ。通行人たちが怪訝な顔をして泣いているボクを覗き込む。
あんなことを言われても彼女が憎いということはなく、むしろ自分自身への情けなさに涙が止まらない。彼女に嫌われてしまう自分、それを笑い飛ばすことも出来ずにその程度のことで泣いてしまう、死にたいほどに傷ついてしまう自分、それでも彼女を嫌いになれない自分。恋心はどこまで行っても恋心で、情けないボクはどこまで行っても情けない。
気付けば、行きつけのゲーセンの前にいた。ゲーム仲間たちが店内でゲームに興じているのがガラス戸の向こう側に見える。いつでも暖かく迎えてくれはするけれども、それが今日に限っては疎ましく感じられる。お前たちが楽しげにゲームをしているのを蔑みの視線で見ているヤツラがいる。そのことを知りもしないで、どうしてそんなに無自覚に笑っていられるんだ?
涙を一拭いして、そそくさと店内に滑り込んで人気のない脱衣麻雀の筐体前に陣取る。ポケットのコインをまさぐって、投入する。チクショウ!チクショウ!チクショウ!何でこんなときも香澄は笑顔なんだ!チクショウ!