帰郷

右足首に紐を結んで
いつでも帰れるからと
小旅行のつもりが
随分と長く滞在してしまった


服を着替えて
髪を染めて
種族を偽って
忍び込んだ世界は


空気の組成までが違うのか
息苦しく
無理がたたって
やがて肺の病を患った


帰ろうと思う
紐を手繰って
元の世界に
受け入れられなくても


歓声の中うたうキミを
世界のはしっこから
遠目に見ているうちに


病も癒えるだろう
あるいは癒えずに死ぬだろう