鉄器

かなしみを鉄器のように硬くして
溢れることのないようにするのだが
触れるひとにはその負の熱が
伝わってしまうのだろう


わたしの周りのやさしいひとたちを
やさしい順番に吸いとって
そして代わりに
かなしみをうつされたひとは一様に
恨みがましい眼差しで去っていった


誰にも触れられなければいいのだと
思うのもつかの間
わたしの欲深な右頬は
あなたのあたたかな左手を
求めてやまない